こ！これわ…山本くんは達人？

諸君は昭和30年代に、日本プロ野球界に、毎日オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)というチームに『榎本喜八』という伝説の強打者がいたのをご存知だろうか？
日本プロ野球史上、2000本安打を史上最年少記録「31歳7ヶ月」で達成し（この記録は、イチロー選手が2004年5月2日に「30歳6ヶ月」で破るまで、ずっと記録保持者は榎本選手だった）。
さらに榎本選手は、
1000本安打の最年少記録も持っていて、
それは「24歳9ヶ月」で達成していて。
これに関しては現在も、1000本安打史上最年少記録で、
今も誰にも破られていないのだ！（1000本安打達成に関しては、あのイチロー選手でさえ8ヶ月及ばずなのである！）

とにかく
榎本喜八選手は、その前人未到の記録から想像するだけでも素晴らしい選手だったのだ。

しかし、そういうこの俺も
榎本選手が実際にグランドでプレイする勇姿を生で見たことがあるわけではない…。
俺、昭和３８年生まれだし、
当時、毎日オリオンズの試合中継とかテレビでめったに観れなかったしね。

だから30年代に榎本喜八選手という偉大な選手がパ・リーグの毎日オリオンズで活躍していたことを俺が知るのは、それより随分あとになってからだ。
俺は20歳越えるまで知らなかった。

それに、まだガキの頃、ものごころついた頃には、もう毎日オリオンズは、既にロッテオリオンズだったしね。

でもね
阪神タイガースの背番号「２８」江夏投手のノーヒットノーランは甲子園球場で生で観たよ。

ごっついカッコよかった！

話を戻します。

山本くんの、
この写真を見てほしい。
先ほど暗闇の中、
黙々と高反発バットを道端で振っていた山本くんだが、
今度は、
もう少し明るい場所でバットを振りはじめた…、
もとい！

正確にいうなら
バットは振ってないぞ！

構えただけだ。

しかも！
山本くんは
バットを構えたまま、
その構えのままピタリとも動かない。
構えて、とまったまま…
そのまま、
いっこうに動く気配すらないのだ！

むむむむむ！
こ、こ！これわ…

ちょっと待て！

これって…
いやがおうにも、
この山本くんの行為わ！
こ！こともあろうにだ！

あの！偉大なる伝説の選手の逸話を彷彿させる行為じゃないか！

こともあろうにだ！
あの孤高のサムライ打者を！

その偉大なる選手こそ、
誰あろう榎本喜八選手なのだ。

榎本選手には
こんな逸話があるらしい…。
たいてい野球選手は
試合前
ベンチ裏にある大鏡の前で、
自分のバッティングフォームをチェックする目的でバットをスイングする…
それ自体は、何も珍しいことではないのだが、
榎本選手の場合は少しちがったらしいのだ…。
もちろん榎本選手もベンチ裏にある大鏡の前にバットを構えて立つことがあったらしいのだが、

榎本選手の場合は、
大鏡に向かってバット構えたら、
なんと！
そのまま動かなかったらしいのである。そして…
こっからが、ごっついカッコイイんだけど！
バットを構えたままで３０分ぐらい経った頃に！
こう言ったらしいんだ！

「ああ、いい練習になった。」

そして
またベンチに戻っていくらしい。

カッコイイ…

そして史上最年少での1000本安打記録保持者だぜ！


話戻るね！
そして
ここで…
あろうことか
山本くんなわけだ。

むむむむむ！
山本くんもバットを構えたまま動かないぞ…

いやがうえにも
榎本選手を
彷彿させるじゃないか…

もしかして…
このまま３０分構えたままで

あのカッコイイ台詞を…
達人にしか許されない…
あの天才と同じ台詞を…

まさか！
言うつもりじゃあないだろうね？

キミは高反発バットなんか持ってるくせに！

まさか、あの偉大なる孤高のサムライの、
あのセリフを…

「ああ、いい練習になった。」

てやつを…

むむむむむ！

高反発バットなんてものを買った奴が、
絶対に、そのセリフを言っちゃあだめだぞ！

あああ山本くんは
まだバットを構えたままだぁ〜！

構えつづけているぞ…

山本くんがバットを構え始めてからの時間の経過を計ってたわけじゃなかったから、構えてから何分経ってるのか、わからんけど…
それに俺の手首に、はめてるのは「時間針のない俺時計」だから、
世間の時間の経過は、どうなってるのかは、わからんし全く興味もないけど…

それにしても…
はっきり言えることは
もし、山本くんが今、
世間でいう３０分経過を目指しているのだとしたら、

それは
ぜったい嫌な予感…。